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※2020年12月の記事再録

嵆康(けいこう)と秘曲《広陵散》

 このブログはちょくちょく細部を改変している。表現が気に入らなかったり、記憶違いに気付いて修正を施すせいだ。推敲前のアップロードもしばしば。故に、一度と言わずに何度でも、同じ記事とにらめっこする羽目になる。

 年末だから色々と慌ただしく、これと言って目新しいことは何一つしていない。強いて挙げれば、生まれて初めてふるさと納税をしたくらいか。いや、本当は文字どおりのふるさとに寄付しようとしたんだけれど、ワンストップ特例の上限額だとか、返礼品の米の量だとか、あれやこれや思案する必要があって、結局は縁もゆかりもない自治体に対して行う流れになった。許せ故郷よ我が弱さ、一陽来復したならば、地酒を買ってたっぷりと、恩返しせん地元経済。

 今日触れるのは『世説新語』だ。変な高校生だったので、暇ができる度に高校の図書館でこれを読みふけった。現代的に解釈するなら、あまり褒められない類の週刊誌や月刊誌に載るような、出所怪しい逸話たっぷりの本だけれど、後漢末から東晋にかけての(当時の)著名人に関する情報に触れられるため、読み物としてはけっこう楽しい。で、その中にある嵆康(けいこう)のエピソードから、楽曲の話をしたい。

 嵆康は隠逸の士として名高く、琴の名手としても有名だった。魏晋革命が間近に迫っていた頃、権力者の懐刀である鍾会という男が個人的怨恨で誣告したため、罪なくして処刑されることになった。刑の執行に先立ち、どこかしらのタイミングで琴を弾くことができたらしい。そして、

「今日が《広陵散》の絶える日か」

と言い残し、殺された。《広陵散》というのは琴の曲名だ。どんな曲だったのか、具体的には分からない。ただ、いわく付きらしく、嵆康にこれを教えたのは幽霊だそうだ。

幽霊と音楽

 手元に『世説新語』がないため、ここから先の記述はもしかしたら『太平広記』に載っていた話かもしれない。ともあれ、かつて殺人事件の起きた家に嵆康が一晩宿り、琴を弾じていたら、その妙なる音色に引き寄せられて幽霊が出た。幽霊は、自分が殺人事件の被害者で、生前は琴を好んでいたと語る。そして、誰にも教えないという約束を交わした上で、嵆康に《広陵散》を伝授する。嵆康は律儀に約束を守った。知人が教えてくれと頼んでも拒み、結果、《広陵散》は幻の曲となってしまった。

 秘曲というだけでも好奇心をそそられるのに、そのうえ幽霊が教えてくれたとなれば、物語として格好の材料だ。もしかすると、件の殺人事件は《広陵散》を教えろ教えないの口論が原因で起きたのかもしれない。それにつけてもおやつはカール、なんで嵆康は以前に殺人事件があった場所で一晩過ごしたのだろう。謎だ。

 


世説新語 上 新釈漢文大系 (76)

 


世説新語 中 新釈漢文大系 (77)

 


世説新語 下 新釈漢文大系 (78)

 

 

 

 

 

 

 

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