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これぞ「昭和」の高校野球暗黒編

 漫画を本の範疇に入れるか否か訊ねたら、賛否両論あるだろう。これ、画集や写真集が本と呼べるかどうかも同じ話で、要するに「文字/記号」が主であるのか従であるのかという判断のせめぎ合いが根底にあると考えられる。一般的な現代日本において「ジャガイモは野菜か否か」と問うのに似てるかもしれない。主食(ごはん)でない上に畑で採れるなら野菜だろ、いやデンプン含有量や特定の国では主食に等しいものという点に目を向けたら野菜扱いはできん、みたいな? 話が脱線したんで元に戻そう。賛否両論あるのを承知した上で、このブログでは漫画を本と見なす。で、本の紹介として今回取り上げるのが『実録! 関東昭和軍』だ。いかにも「昭和」のノリで高校野球の負の側面を戯画化した本作は、文句なしに面白い。題名からして狙っている。もちろん、フィクションだよ。実録なんて文学的修辞さ。けどね、いわゆる元ネタが注釈を交えて読者に分かりやすく説明されていて、キャラはどいつもこいつも一貫して身勝手不道徳でありながらユーモラスな点が面白い。

 

 

推測だけれども、作者は右派でも左派でもなく、ひたすら反権力・反権威が作風なんだろうね。著名人や有名団体、マスコミ、世の中の流行なんかをこれでもかとおちょくっている。けれど、そんなものは物語のアクセントに過ぎない。あくまでも作品の中心にあるのは、ロクデナシたちのコミカルな悪あがきや身勝手な喜怒哀楽の発露だ。それから、作者の高校野球への(偏った)造詣の深さ。アマチュア野球で「軍」を名乗れるのは関東昭和軍だけだよ。

あの人もこの人も登場する

 この作品を大まかに紹介をすると、悪名高い関東昭和高校の不良野球部員たちが理不尽なしごきに日々晒されながら、高校野球での成り上がりを目論む物語だ。清々しさ皆無。登場人物は老若男女問わず我利我利亡者。また、20年近く前の作品なんで、はっきり言って古い。今の若者には伝わらんだろうなという情報も多い。日本が美しい国でいられるのはオーラの泉のおかげ、なんて言っても不審の眼差しを向けられるだけだ。それでも、高校野球に詳しい人ならば有名監督と「似た」対戦校監督にきっと笑うだろうし、そうでない人だって、始球式に登場する内閣総理大臣がこれまた実在の元首相に「似て」いるのを目にして笑うだろう。つうか、反則だろ。モンゴルからの野球留学生は。あの横綱と同じ名前って。そもそも、登場人物の名前遊びからして腹が痛い。どうやったら『金色夜叉』の貫一とお宮を人名にする発想が湧いて出てくるんだ。更にまた、大人や組織の使う詭弁や強弁だとか、高校球児たちの身勝手極まりない心の叫びだとか、この作品には今でも通用する笑いが満ちている。特に、関東昭和の監督である尾宮が甲子園でブった高校野球監督についての演説なんて、風刺が効きまくりで楽しい。ブラックユーモアがお好きな方には薦めたいし、ポリティカルコレクトネスを大切にする方には全くお薦めしない作品だ。

 

 

 

 

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