酒と開高健

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※2020年5月の記事再録 2021年3月加筆

開高健に憧れた昔

 マスクは届いたけれど、給付金の申請書類がまだ届かない。天地広しといえども、我を容るること能わず。いつものことながら、思うに任せない日々だ。そんな時は本の話をするに限る。

 日曜日の夕方は、何もなければちびちびと酒を飲む。で、酒に合う本となれば、自分の中では開高健の作品が一番だ。もう、吉野初瀬に山桜、李絶杜律、トレドの街にエルグレコというくらい、酒と開高健はよく似合う。

 高校生の頃に、ふと書店で開高健の文庫本を手にしたのが始まりだった。たぶん『歩く影たち』か『地球はグラスのふちを回る』のどちらかだったと思う。大人らしさに惹かれる年頃だったので、小説やエッセーで登場する様々な佳酒と外国に関する話題、そして性についてのあれこれが、いかにも大人の世界という感じで、わりあいと熱心に読んだ記憶がある。文体の好みはそこで決まったように思う。

 しょぼくれた、中年に、なって日暮れて途遠し。近頃はさっぱり読んでいないものの、今でも時折思い返す。令和の若者たちには、古い昭和の話だからイマイチ読み進めにくいかもしれない。ただ、才気煥発な作者の紡ぐきらびやかな文章と、にじみ出るほろ苦い憂愁は味わってみて損はないと思う。好みの味ではないけれど、舌に旨さはしみてくる。そんな、熟成された酒のような小説家だ。

以下、加筆分。
 開高健の魅力についていささか付け加えたくなったので、蛇足承知で筆を執る。文章からむんむんと立ちこめる熱気みたいなものも、開高健の大きな特徴だ。加えて、時々、歯を食いしばって書いたんだなという雰囲気が行間から伝わってくるページがあって、それも一つの素晴らしさというか、開高健の作品が読者を惹きつける点だと思われる。スポーツ観戦中に、観客であるこちらが自然に手を強く握るかのごとき状態と言い表せばいいか。んで、そうした緊張感が破られ、激情のほとばしりと表現するのがふさわしい、イメージと言葉の衝撃波を浴びるような感覚に襲われるページに出くわしたりもする。山あり谷あり川あり海ありだ。そして最後に、どこまでも青く続く空を見上げる、と。

 釣り、食道楽、旅、戦争なんてものが、開高健を語る際によく使われる言葉だろう。確かにそうだ。そこへ一つまみ、個人的に別の言葉を混ぜたい。エネルギー、あるいはズシリとして、堅牢無比な手触りの重さ、と。

 


輝ける闇 (新潮文庫)

 


地球はグラスのふちを回る (新潮文庫)

 


歩く影たち (新潮文庫)

 

 

 

 

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